ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-482
*藤本真悟, 山平寿智(新潟大・院・自然科学)
高緯度に進出した変温動物は,短い期間に繁殖と成長を集中させるような適応(=高い繁殖/成長能力)を進化させていることがわかってきた.メダカでも,高緯度の集団ほど繁殖と成長が短期間に集中していることが知られている.こうした緯度に沿った生活史スケジュールの変化は,オス間の配偶者獲得数の潜在的差異,すなわち‘性淘汰’に,どのような影響を及ぼすだろうか?本研究では,緯度の異なる2野生集団(青森 vs. 福井)から採集したメダカの繁殖行動を,自由交配実験により観察・比較した.その結果,オス同士の闘争,抱接(オスが尻鰭と背鰭でメスに抱きつく行動)の妨害,そしてスニーキングの頻度はいずれも福井のオスよりも青森のオスの方が低いことがわかり,高緯度の集団の方が同性内淘汰が弱いことが示唆された.また,福井より青森の方が,オスの求愛(クイックサークル)の頻度は低く,メスはオスの抱接を拒否しない傾向にあった.これらは,高緯度の集団では異性間淘汰も弱いことを示唆する.さらに,形態解析の結果,福井より青森の方がオスの二次性徴(尻鰭・背鰭の伸長、光沢鱗数の増加)発現が弱く,性的二型の程度が小さいこともわかった.講演では,高緯度で性淘汰が弱くなる生態的要因(繁殖期間の集中度と配偶者獲得数の差異との関係)と遺伝的要因(生活史形質と繁殖行動とのトレードオフ)についても考察する.