ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-485
*長太伸章(京都大・理),久保田耕平(東京大・農生),八尋克郎(琵琶湖博),曽田貞滋(京都大・理)
近縁種間で作用する生殖隔離機構の成立過程やその機能を解明することは種分化のメカニズムを解明する上で重要である。生殖隔離に関与する形質がどのように成立したかは、近縁種間の系統関係を解明することによって推定できる。さらに遺伝子浸透が見られる種間では、遺伝子浸透の程度を交雑の程度の指標として使うことによって、作用している生殖隔離機構の強さを測ることができる。しかし、遺伝子浸透が見られる種間の系統関係を解明するには、遺伝子浸透の影響を除いて解析しなければならないため、複数の遺伝子座を解析する必要がある。
日本固有のオサムシ、オオオサムシ亜属Ohomopterusは機械的隔離機構を示す代表的な分類群で、交尾器や体サイズ差が隔離機構として作用していると考えられている。近畿地方には体サイズは似ているが交尾器形態に著しい差がある近縁種4種がモザイク状に分布している。ミトコンドリアDNAを用いた分子系統解析ではこれらの種間でも交雑が生じ、遺伝子浸透が起こっていると考えられている。そのため、これら4種の系は交尾器形態の分化過程の解明や、形態差による機械的隔離の強さを評価する上で好適な系であると考えられる。そこで、本研究では近畿地方のオオオサムシ亜属4種についてミトコンドリアDNAのシーケンスデータとマイクロサテライトマーカーによる多型解析を用いた系統地理解析を行った。これによって、4種の分化過程を推定し、遺伝子浸透の程度と形態差の関連から作用している隔離機構の程度について評価した。