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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-491

グッピー(Poecilia reticulata)におけるLWSオプシン遺伝子が個体の光感受性に与える影響

*村田和人(東北大・生命),笠木聡(東大・新領域),河村正二(東大・新領域),松島野枝(東北大・生命),河田雅圭(東北大・生命)


集団内・集団間において、どのようなメカニズムで遺伝的変異や表現型変異が維持されているのかという問題は進化生物学の最も重要なテーマの一つである。近年、注目されているのが、生物の選好性に関する形質(オスの性的ディスプレイとそれに対するメスの選好性)に変異が維持されている場合である。性的形質の変異は、集団内での選好性多型を生み出し、それによって急速な交配前隔離を生み出しうる。本研究で用いたグッピーは集団内・集団間においてカラーパターン及び選好性の変異が維持されている(Endler 1991,1992, Houde 1997)。これまで、グッピーの長波長側感受性(LWS)錐体オプシンの遺伝子に多型が存在することが示され(Kasagi in prep)、それがグッピーにおける多様な性的形質をもたらしていることが示唆されてきた。しかし動物の視覚と機能を調査する上で、分子的な解析だけでは個体の行動レベルの応答を見ることはできない。故に本研究では日本に移入した二つのグッピー集団(沖縄県我部祖河、静岡県下田市)においてLWSオプシン遺伝子における遺伝的解析と、個体レベルの光感受性がどのように関係しているかを調査した。その結果、遺伝子型及び場所間で有意に光感受性が異なっていた。これにより、グッピーは同所・異所的に異なる光感受性を維持しており、その一部をLWSオプシン遺伝子における違いによって説明できることが分かった。こうした結果により、グッピーの多様な性的形質がLWSオプシン遺伝子による多型によってもたらされている可能性を示すことができた。


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