ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-493
*西澤裕文(北大・環境科学院),高田壮則(北大・地球環境科学研究院)
協同繁殖とは、グループ内で自身の子以外の子供を育てる繁殖手段と定義される。繁殖する雌雄個体の関係に着目すると、一夫一妻、一夫多妻、一妻多夫、多夫多妻という様式がある。さらに、自身は直接繁殖には参加せずにグループ内で子育てを助ける個体(ヘルパー)が存在するのか、ヘルパーがどれくらいの割合で存在しているか、ヘルパーの性比、グループサイズまで考慮すると、その様式はとても複雑で多様であるといえる。
同じグループに所属している個体同士は、集団で生活することによって、捕食者に対する防御、繁殖機会の増加、採餌効率の増加、といった協力関係による利益を得ている。しかし同性個体間は、繁殖機会をめぐる競争関係にある。また1つのグループで協同繁殖をおこなう個体の数は、利用できる資源の大きさによって制限されていると考えられる。これらの間の緊張状態が、さまざまな種で見られる多様な協同繁殖の形成に影響をあたえているのかもしれない。
そこで本研究では、グループを構成する同性個体間における、繁殖機会をめぐる競争関係から起こりうる他個体の追放、加えてグループ外からの新たな個体の侵入という事象に着目し、それらが協同繁殖の様式に与える影響について調べることを目的とした。
そこで、個体の寿命、年齢・性別に対する競争能力の違いをパラメータとした数理個体ベースモデルを模索した。このモデルではグループ構成個体がグループの環境状態を認識し、その認識にもとづいて個体間で追放・非追放の相互作用、その後に侵入個体との相互作用がおこる。その結果生まれた新たなグループの環境状態が次の個体の行動に影響を与える。コンピュータシミュレーションを行うことによって、そこから形成されるグループの共同繁殖様式のパターンとの関連性について調べた結果を報告する。