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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-494

渓流沿い植物の葉形態変異と分断化淘汰:ハビタット構造と自然選択

野村尚史(地球研),藤原健人(東大),伊藤元己(東大),瀬戸口浩彰(京大),高相徳志郎(地球研)


キク科のツワブキでは、種内の葉形態変異がみられ、林種や林縁では丸葉となるのに対して、流水撹乱のある渓流帯では狭葉(リュウキュウツワブキ)になる事が知られている。

狭葉型では、葉肉細胞が高密度化して力学強度と引き換えに光合成効率が低下する。この事から、狭葉型−丸葉型という形態型の間では、流水耐性と生産性のトレードオフが示唆される(Nomura et al. 2006)。一方で、西表島内の集団解析では、狭葉型-丸葉型の形態変異が集団間分化を伴っておらず、これらの形態変異は集団内多型と考えられた(Nomura et al. 2007)。

そこで、渓畔と林床のハビタットが隣接し、細葉型から丸葉型まで連続的な表現型が分布する集団を用いて、環境の選択圧による集団内分化を検証した。集団内の表現型は、渓畔に分布する「狭葉型」と林床に分布する「丸葉型」の二つに大別されたが、SSRを用いた父系解析からは、ハビタットや表現型をまたぐ広範な花粉流動が確認され、実生段階での表現型間の遺伝分散は1.2%と低かった。一方で、生存率と繁殖率を比較すると形態変異の上で二山形の分布をしており、繁殖段階では表現型間の遺伝分散が5.5%と有意であった事から、ハビタット間で異なる選択圧が存在し、「渓畔は狭葉・林床は丸葉」という分断化淘汰を生み出している、と結論付けられた。


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