ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-504
*高橋大輔(京大・生態研センター), 山内淳(京大・生態研センター)
植食者に対する植物の防衛戦略については多くの理論的研究がなされている。そうした研究には植物のフェノロジーに注目したものも含まれるが、それらは全シーズンにおいて一様に食害を受ける状況や、各時刻で確率的に食害が発生する状況にを想定した研究であった。しかし実際の植食者を考えた場合、シーズン中の限定された期間に連続的に食害を与える植食者も少なくない。そこで、シーズンの特定の期間にある確率で植食圧が加わる状況における植物の最適防御スケジュールを、動的最適化により理論的に解析した。本研究では Yamamura and Tsuji (1995) のモデルに即して、栄養器官と防衛器官からなる一年生草本を仮定し、最終時刻での栄養器官のサイズの期待値を最大化する問題を考えた。モデルではシーズンを前半と後半の2つに分け、前半では食害が発生しないが、一定の確率でシーズンの後半において食害を受けるとした。解析においては、シーズンの前後と植食の有無を区別して成長過程を記述し、最大化原理によって導入される補助変数の値をシーズン後半の始端において平均したものをシーズン前半での終端条件として、シーズン全体を接続して最適化を行った。結果については、食害が発生する以前から防御に投資するか否かで、植物の戦略を恒常的防御と誘導防御に分類した。その解析により、植食圧が低い場合には恒常的防御、植食圧が高い場合には誘導防御が最適となるという直感に反した結果が得られた。さらに、植食者についても出現時刻の最適化を組み入れて、植物と植食者の共進化を解析した。その結果、両者が共進化する場合には恒常的防御は現れにくいという予測が得られた。