ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-512
竹本周平,丹羽慈,岡田浩明(農環研・生物生態機能)
線虫は分布が普遍的であり物質循環への関与も指摘されていることから、その群集構造の解析により土壌特性を評価することに利用されている。解析に先立ち、採取した土壌サンプルを短期間保存しておく必要に迫られることがしばしばある。その際、群集構造の変化を極力避けるため、慣例的に10℃で3週間を超えない程度の保存期間がとられている。本研究では、その妥当性の検討のため土壌3種類を用いて室内実験を行なった。ポリエチレン製の袋に土壌を取り分け(森林土壌で湿重30 g、農耕地土壌で80 g)、5℃、10℃、20℃の暗所に保存した。定期的に各種土壌を3袋ずつ回収し、それぞれ全量からベールマントレイ法で線虫を分離した。各線虫サンプルから抽出したDNAより18S rDNAの一部をPCR増幅した。これをDGGEによりバンドとして分離し、その染色像を得た。移動度の異なるバンドを異なるOTU(操作的分類単位)、その強度をアバンダンスの指標として群集構造を解析した。農環研ダイズ圃場の土壌からは計18 OTUが検出され、全アバンダンスの50%以上を最上位のOTUが占めた。群集の多様度は実験期間を通じて横ばいであったが、20℃では4日目に低い値をとった。保存開始時の群集との平均非類似度は保存日数と温度に影響された。20℃では日数経過に伴って非類似度は高まり、28日後には保存開始時より、また5℃においた場合より高くなった。従って、この土壌を2週間以上保存する場合20℃ではなく10℃ないし5℃におくことが勧められる。なお、一部のサンプルの群集構造を形態同定に基づき解析した結果を、丹羽らが本大会で報告する。その上で、分析結果の違いについても検討する予定である。