ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-515
手塚あゆみ(東北大・院・生命科学),笠木聡(東大・院・新領域),河村正二(東大・院・新領域),Cock van Oosterhout(University of Hull),松島野枝(東北大・院・生命科学),河田雅圭(東北大・院・生命科学)
本研究の研究対象であるグッピーは性選択のモデル生物として古くから研究されている。グッピーの特徴として、オスが多様なカラーパターン(黒、オレンジ、虹彩色から構成される)を持つこと、メスがそのいくつかの形質に対して選好性を持つことがあげられる。理論上、直接的なメスの選好性はカラーパターンの多様性を減少させると考えられ、なぜカラーパターンの多様性が維持されているのかについて、多くの研究が行われてきたが、十分に明らかになっていない。メスの選好性に影響を与える要因のひとつとして色覚が挙げられる。環境によって適応的な色覚が異なり、色覚の適応進化の結果、メスの選好性が多様化し、カラーパターンも多様化しているのかもしれない。網膜上の錐体細胞のスペクトル応答はオプシンのアミノ酸配列の変異によって変わるため、LWSオプシン遺伝子の多型は色覚感受性の違いを生じている可能性がある。これまでの笠木ら(未発表)の研究から、グッピーには5つのLWS遺伝子座があり、そのうちの2つで高頻度の集団内多型を示していることが明らかになった。色覚の多様化には生息地環境が関係している可能性が考えられ、LWSの多型に関してbalancing selectionが働いている可能性がある。本研究では、この可能性を確かめるために、グッピーの原産国であるトリニダッドの河川において、採集されたグッピーのLWS遺伝子の3遺伝子座の集団間の分化と中立遺伝子であるマイクロサテライトの分化の程度を比較しLWS遺伝子に働く選択の影響を調べた。