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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-523

低温に対する開花応答性の自然変異とその遺伝的基盤

*杉阪次郎(京大生態研センター), 清水健太郎(チューリヒ大), 角谷徹仁(遺伝研), 工藤洋(京大生態研センター)


「いつ花を咲かせるか」は、植物の繁殖成功を左右する重要な適応形質であり、日長や気温の季節変動に応答して可塑的に変化する。シロイヌナズナにおいて花成制御の遺伝子ネットワークの解明が進み、低温に対する開花応答の変異が、花成抑制遺伝子FLC(FLOWERING LOCUS C)の発現量という量的な要因に集約できることが明らかとなりつつある。タチスズシロソウは異質倍数性起源の四倍体で、シロイヌナズナ属の二倍体種が親種である。本種は、低温によって開花が促進されるが、低緯度の集団ほど、長期の低温を必要とする集団間変異があることがわかっている。本研究は、開花応答性の集団間変異を対象に、異質四倍体における適応の遺伝的基盤を明らかにすることを目的とした。シロイヌナズナではFLCが実生時から発現し、長期の低温よって発現が抑えられ開花に至ることが分かっている。本研究の結果、クローニングによって同定された異なる推定両親種由来のFLC-like遺伝子(以下AkwFLC)が両方とも転写されていることが判明した。AkwFLCの低温に対する応答性を調べるため、2タイプの転写量の総量を定量した。その結果、長期の低温処理によってAkwFLCの転写量が低下することがわかった。AkwFLCの初期転写量は集団間で有意な差がみられたが、AkwFLC転写量の変異は、開花までの日数における変異を説明しなかった。しかし、低温処理に対するAkwFLC転写量の低下速度を比較した場合、早咲き集団で低下速度が速く、遅咲き集団で低下速度が遅いことが明らかになった。このことから、AkwFLC転写量の低温応答の程度が開花の変異を説明する可能性が示唆された。


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