ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-528
*広永良(京大・生態研),山村則男(地球研)
古生態系において、食物網の構造が絶滅により影響を受けていたことが化石記録からの推定により明らかにされている。絶滅の頻度は時代とともに変遷してきたため、これが食物網構造の変化を通して各時代の生態系の特徴に影響を与えてきたことが考えられる。本研究ではこの可能性を検証するため、絶滅の頻度が食物網構造に与える影響を数理モデルによって調べた。同様の理論研究はこれまでにも存在したが、それらは生態学的タイムスケールでのものだった。一方、本研究ではより長いタイムスケールを考えており、種分化や移入、多数回の絶滅、絶滅と食物網構造の変化との間のフィードバックという新たなプロセスを組み込んだモデルを用いた。
シミュレーションの結果、絶滅の頻度が大きいときには、「全体的に種数は減少するが、特に消費者で種数が大きく減少する」「総個体群密度は減少するが、1種あたりの個体群密度は増加する」「食物網のリンク密度が上昇する」ということが分かった。これらの結果はパラメータ値の変更に対しても一貫しており、また、化石記録による実証研究の結果との一致もみられた。種数や個体群密度、リンク密度の変化は様々な生態系の特徴に影響を与えることが知られているため、本研究の結果は過去の生態系の理解につながることが期待される。