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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-530

高山植物ミヤマキンバイにおける多起源的なエコタイプの分化パターン

*平尾章(信大・山岳研),下野嘉子(畜産草地研),池田啓(京大・人間環境),和田直也(富山大・極東地域センター),工藤岳(北大・地球環境)


日本の高山帯では,世界的にも稀な強風と多雪環境によって,風衝地と雪田という対照的なハビタットが成立する.高山植物であるミヤマキンバイ(Potentilla matsumurae)は,これらのハビタットに適応して,風衝地型と雪田型エコタイプに遺伝分化していることが栽培実験やアロザイム分析によって明らかになっている.本研究では,系統地理学的な手法を用いてエコタイプ分化の起源を明らかにしようと試みた.

ミヤマキンバイは,本州(中部〜東北)・北海道・サハリン・千島列島で分布が確認されている.文献および現地調査から,風衝地型および雪田型エコタイプの分布をまとめたところ,風衝地型は分布全域にわたって認められたが,雪田型は北海道および本州中部の日本海側に分布が限られていた.東北地方では雪田植生があるにも関わらず,それらの雪田にはミヤマキンバイが分布していなかった.

次に,日本の各山岳地域の風衝地および雪田から試料を集め,葉緑体DNA(rpl20-rps12およびtrnTL領域の約1500bp)に基づく系統解析を行った.その結果,エコタイプ分化は単起源ではなく,少なくとも北海道と本州中部では別個にエコタイブ分化が生じたことが明らかになった.雪田で検出できたハプロタイプの種類は風衝地に比べて少なく,雪田に特有のハプロタイプは見つからなかった.また,ある雪田で検出できたハプロタイプは,同一山岳地域の隣接する風衝地でも検出することができた.これらの事実は,風衝地型から雪田型へのエコタイプ分化の方向性を示唆する.今後,Genomic scanを用いた適応的遺伝子の探索を試みる.


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