ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-531
*田中洋之(京大霊長研),伊藤誠夫(北大博物館),湯本貴和(地球研)
東アジア産ナガマルハナバチ亜属 (subgenus Megabombus)の種の認識や類縁関係に関しては,いまだ研究者間でのコンセンサスが得られていない.こうした状況を解決するため,可能な限り多くの材料を用いて形態学的な研究をすすめる一方,mtDNAのCO1塩基配列を用いたDNA分類を試みた.本報では,Megabombus亜属に属する東アジア産6種について実施した系統分析の結果を報告する.Bombus consobrinus(本州,サハリンおよび東アジア大陸各地),B. yezoensis(北海道),B. koreanus(韓国),B. hortorum(イルクーツク),B. sushkini(モンゴル)およびB. tichenkoi(千島列島)の6種39個体を対象に,CO1遺伝子1041 bpを決定した.ヨーロッパのB. hortorumとB. consobrinusの塩基配列(Pedersen 2002)を加え,ベイズ法および最尤法により系統分析を行い,各分類群間の進化距離もとめたところ,どちらの分析法でも種レベルで一致した系統関係が得られた.まず,sushkini + tichenkoiのクラスターが分かれ,hortorum,本州産consobrinus,koreanus,大陸産consobrinusの順に分岐した.B. yezoensisは,大陸産consobrinusのクラスターに含まれた.同種と考えられていた大陸および本州のB. consobrinusの間には今回のDNA分析から種レベルの隔たりがあると思われた.一方,B. yezoensisと大陸産consobrinus,sushkini と tichenkoiの間にはいずれも進化距離1%未満の違いしか見られなかった.形態分析の結果とあわせて本亜属の分類の見直しを提言したい.