ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-541
*布施名利子(九大・理),粕谷英一(九大・理)
オスの求愛行動にはエネルギー的、時間的コストがかかる。オスが求愛行動に投資できる時間には限りがあり、オスは限りある時間を、求愛可能なメスの間で最適に分配することで交尾成功数などをあげることができるだろう。どのような分配の仕方が最適なのかは、その生物の繁殖様式により異なると考えられる。乱婚で、雌雄ともに複数回交尾をするような生物では、オスは交尾を受け入れてもらいやすいメスに長時間求愛することで交尾成功数をあげ、自身の適応度をあげるかもしれない(メスが1度しか交尾を受け入れないような種では、交尾を受け入れやすいメスほどオスの求愛時間は短くなると予想される)。
メスによる近親交配回避は多くの動物の分類群で観察されている。そのような動物において、オスが血縁度の高いメスに求愛することは不利になりうる。血縁度の高いオスから求愛されてもメスは交尾を受け入れにくいため、オスにとってそのようなメスへの求愛は効率が低く不利であり、交尾を受け入れる可能性の高い血縁関係の遠いメスがいればそちらに求愛したほうがよいと考えられる。実際に、メスが血縁者との交尾を回避するノネコでは、オスが血縁度の低いメスを選んで求愛していることがすでに明らかになっている。ノネコの配偶様式は乱婚で、発情しているメスにオスは長時間求愛し、多くの場合、そのメスが1度交尾を受け入れたあともメスのそばから去らず、同じメスと何度も交尾をしようとする。オスはより交尾を受け入れてもらえやすい血縁度の低いメスに長い時間求愛を行うことで交尾回数の上昇といった利益を得ることができるのかもしれない。
そこで本研究ではノネコのオスが血縁度の低いメスにより長い時間、求愛をしているかどうかを検証した。雌雄間の血縁度と各メスへの総求愛時間の間に負の相関があるかを解析した。