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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-561

ヒメオオアリ亜属における多女王制・分巣繁殖の進化

*川島佑貴子(東京農工大・農),廣田忠雄(山形大・理),佐藤俊幸(東京農工大・農)


アリの各分類群で散在的にみられる「多女王制」の進化に関して、その系統発生学的な起源や集団分化に関する研究はまだ少ない。本研究では日本固有種で互いに姉妹種と考えられている多女王制のヤマヨツボシオオアリと単女王制のナワヨツボシオオアリ、及び、これらと近縁である単女王制の4種を外群として、多女王制が(1)いつどこで何回進化し、(2)どのように分布を拡大したのか明らかにするため、日本各地のサンプルをもとにミトコンドリアDNA解析と核DNAのAFLP解析を行った。

ミトコンドリアDNAのCO1領域の塩基配列を解析した結果、外群含め6種で30のハプロタイプを識別した。UPGMA系統樹から大きく2つのクレードが形成されたが、ヤマヨツボシオオアリは1つのクレードを形成したので、多女王制の進化は1回であることが示唆された。また、Nested-clade-Analysisによると、ヤマヨツボシオオアリは、屋久島を含む南方を起源とし、派生集団の1つが日本全国に分布を拡大した一方、集団の断片化や局所的な絶滅も起こったものと推定された。

AFLPのデータによるNJ系統樹はミトコンドリアDNAの系統樹と同様、多女王制の進化が1回であることを支持した。また、ヤマヨツボシオオアリについて地域集団間の地理的距離とFstの関係を見たところ、相関は見られなかった。これは、ヤマヨツボシオオアリの分布拡大が上述のように起こったこと、ヤマヨツボシオオアリでは累代的な巣内交配のためコロニー内遺伝構造が均一化する一方、コロニーが巣分れ繁殖することにより、系統が同じであれば地理的に離れた集団同士遺伝的に類似していたり、系統が異なれば地理的に近い集団同士でも遺伝的に分化していたりするためと考えられる。


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