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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-564

マルカメムシの味見行動

*清水加耶,乾陽子(大教大・教養)


マルカメムシは、日本に広く分布する普通種であるが、生活史などの基礎的な生態の詳細は分かっていない。本研究ではまず、大阪府中部にて個体群調査を行い、マルカメムシが年1化を基本とすることを明らかにした上で、第1世代を用いて行動実験及び飼育実験を行った。

マルカメムシはクズを始めとしてマメ科植物を広く摂食するとされ、野外でもクズ上で集団形成をするのがよく観察されるが、食草の幅や選好性についての詳細な報告例はない。まず、摂食に影響を与える可能性がある植物の特性として、マルカメムシが口吻を挿し吸汁を行う部位である葉や茎の軸部の硬さに注目し、クズおよびクズと混生する3科4種の植物を用いて貫通荷重を測定した。その結果、クズの茎は広い範囲で顕著に貫通荷重が低く柔らかいことが分かった。

しかし、マルカメムシ成虫の摂食行動実験を行った結果、吸汁したマルカメムシ成虫の割合はどの植物種を与えた場合でも同程度に多く、したがって、吸汁部位の硬さの違いは、成虫にとって吸汁可能性の決定要因になりえず、潜在的な食草範囲はこれまで知られているよりも広いことが示唆された。一方、幼虫の飼育実験では、ニセアカシアを与えた場合にクズを与えた場合よりも著しく高い死亡率を示し、成長できなかった。幼虫はクズへの依存度が高く、その要因として食草の硬さが吸汁を阻害している可能性があると考えられる。

成虫は摂食実験において、5種すべての植物を吸汁したものの、吸汁の仕方は植物種によって異なり、クズに対して特に長時間の吸汁を示した。クズ以外の植物に対しては、何度も口吻を挿しなおして比較的短時間の吸汁を繰り返すという「味見」とも言える行動パターンが検出された。成虫は、複数科の植物を吸汁できるものの、口吻を挿し吸汁を行った後の段階における選好性が、現実の食草範囲の決定要因として重要であると考えられる。


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