ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-569
*鈴木雄也,山平寿智(新潟大・理)
近年、高緯度に生息する個体ほど、短い成長期間に対する適応の結果として、高い成長能力を進化させていることがメダカを初めとして様々な変温動物で明らかになってきた。しかし、速い成長は生活史のあらゆる面で有利なはずであるにもかかわらず、低緯度の個体はなぜ速い成長を進化させないのだろうか。これは、速い成長に対するトレードオフの存在を示唆している。速い成長に対するトレードオフとして、(1)分配トレードオフ:成長への資源分配の増加に伴う他の機能(繁殖など)への資源分配の減少と、(2)獲得トレードオフ:獲得資源総量の増加(=摂餌量の増加)に伴う捕食リスクの増加、の2つが理論的に予測されている。しかし、これまでの生活史進化の理論/実証研究は、分配トレードオフにのみ着目したものが多い。本研究では、メダカをモデルシステムとして、獲得トレードオフの有無を検証した。摂餌行動観察の結果、高緯度のメダカの方が単位時間に獲得する餌の量が有意に多いことがわかった。また、アキアカネのヤゴを用いた捕食実験の結果、高緯度のメダカの方が有意に捕食されやすいこともわかった。これらの結果は、資源獲得と捕食回避との間のトレードオフを示唆している。発表では、高緯度のメダカにおける高い摂餌量と低い捕食回避能力の至近的メカニズムについて考察するとともに、成長速度にかかる淘汰要因とその緯度勾配に関する考察を展開する。