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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-571

生息環境の異なる複数のため池におけるカワバタモロコの生活史変異〜個体群動態を中心として

*鈴木 規慈,原田 泰志(三重大院生資),前畑 政善(琵琶博),畠山 絵美,高久 宏佑(三重大院生資)


様々な生物において,成長率や生残率,寿命,成熟年齢等における個体群間での変異(以下「生活史変異」とよぶ)が知られている.この変異の実態とそれを生じさせた要因を明らかにすることは,生物学的に興味深いだけでなく,対象種の保全を行っていく上でも重要である.なぜならば,種内変異を把握し保全すること自身,重要であるからである.しかしながら,淡水魚類の生活史および個体群動態について,こうした観点から行われた研究例は少ない.そこで,小型のコイ科淡水魚であり,環境省のRDBにおいて,絶滅危惧IB類に指定されているカワバタモロコの野外個体群間の生活史変異について研究を行った.

2007年および2008年の4月から11月に月1回(計14回),本種が生息する滋賀県下のため池10箇所で野外調査を行った.セルビンを用いて採集した個体の雌雄判別と標準体長および体重の計測を行った.また,左体側より鱗を採取し年齢査定を行った.採集個体の成熟状態の評価を行い,繁殖期の推定を行った.環境条件として,日中の水温およびDO,水質を測定した.

その結果,性比および体長組成に,池間および季節間で差が認められた.また,池間で年齢組成,成長,繁殖期に差が認められた.たとえば,2歳未満の小型個体によって占められる池と,それ以上の年齢の大型個体が多い池が認められた.また,多くの池で繁殖期は6−8月であったが,他と比較して繁殖期が短い池が認められた.このような池は水温が低く,DOも低かった.本種は生息地によって,その生活史および個体群動態等が異なり,それが生息地の環境条件の変異と対応している可能性が示唆された.本講演では,これらをはじめとして,本種で観察された生活史変異およびその環境条件との対応関係について報告する.


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