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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-573

シオマネキにおける生活史特性の地域間変異 ー徳島、熊本、沖縄の比較からー

*青木美鈴, 渡邊陽子(奈良女子大・理),今井秀行(琉球大・理),鎌田磨人(徳島大・工),和田恵次(奈良女子大・理)


南西日本の沿岸域の干潟に生息するスナガニ科のカニ,シオマネキUca arcuataの生活史については,熊本県大野川河口域の個体群の研究例がある.本研究では,シオマネキにおける生活史特性の地域間変異を明らかにすることを目的として,本種の分布域の北に位置する徳島と亜熱帯域である沖縄の個体群の生活史特性を調査した.さらに,熊本の個体群を加えた3地域において,配偶行動について調査し,比較した.

沖縄の個体群では,配偶行動が夏季と冬季に観察され,繁殖期が年に2期あることが明らかとなった.また,その配偶行動を示す甲幅サイズと月別甲幅組成から,徳島の個体群は,熊本の個体群と同様に繁殖開始が定着後2年目にあるのに対し,沖縄の個体群では,定着後1年で繁殖に参加する可能性が示唆された.さらに,最大個体の甲幅が,沖縄の個体群(約32 mm)では,徳島や熊本の個体群(約36 mm)に比べて,小さかった.

配偶行動様式は,徳島では,つがい形成が,地表面と巣穴内で,ほぼ同じ頻度で観察されたが,沖縄では,つがい形成が地表面でのみ観察された.また,つがいの甲幅サイズの関係は,熊本と沖縄では,雌雄の甲幅サイズに正の相関が認められたが,徳島では雌雄間の体サイズに相関性はなかった.つがい形成個体の体サイズは,沖縄が3地域の中で雌雄ともに最も小さかった.

これらの生活史特性の結果から,沖縄の個体群は,徳島や熊本の個体群とは異なり,個体の平均サイズが小さく,繁殖期が年に2期あり,早熟で,繁殖へのコストが他の地域よりも大きいという特徴をもつことが示唆された.


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