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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-580

概日時計の変異したアズキゾウムシ:遺伝的基礎および発育時間との関係

原野智広(九大院・理・生態科学), 宮竹貴久(岡山大院・環境・進化生態)


生物は、一般に、日々の明暗サイクルに同調した24時間のリズムで活動している。しかし、外界条件の変化がなくても、多くの生物の活動に概ね24時間の周期が現れる。この概日リズムは、生物が体内時計を備えていることによって発生する。さまざまな生物種において概日リズムが観測されており、種固有の概日時計の周期長が報告されている。我々は、アズキゾウムシの7つの系統(起源の異なる虫から確立された集団)において、恒暗条件下で成虫の歩行活動の周期を計測し、本種の概日リズムに種内変異が存在することを発見した。周期長は、最も短い系統では平均19時間であったのに対して、最も長い系統では平均23時間であり、また系統によって無周期個体の割合が大きく異なった。この概日時計の変異の遺伝様式を明らかにするために、系統間で交雑を行い、F1およびF2個体の概日リズムを調べた。その結果から、概日リズムは、常染色体上に位置し、相加的効果を持つメジャージーンによって支配されていることが示された。概日時計の遺伝的変異は、時間を尺度とする生活史形質とも関係している可能性がある。その根拠として、概日リズムの周期が短いと、発育期間も短いという遺伝相関が2種のハエ(キイロショウジョウバエおよびウリミバエ)において発見されている。そこで、この遺伝相関がアズキゾウムシにおいても存在するかどうかを検証した。本種では卵から成虫になるまでの発育時間が系統間で異なっていたが、その違いは概日リズムの系統間変異と相関していなかった。さらに、系統間交雑のF1およびF2個体の発育時間を調べた結果、概日リズムと発育時間の遺伝的基礎は異なることが示された。これらの結果は、2種のハエでの研究結果とは異なり、アズキゾウムシでは、概日リズムと発育時間の間に遺伝相関がないことを示している。


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