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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-585

足尾山塊におけるGPSテレメトリー法によるツキノワグマの秋期の土地利用解析

*根本唯(東京農工大学),小坂井千夏(東京農工大学),小池伸介(東京農工大学),中島亜美(東京農工大学),山崎晃司(茨城県自然博物館),梶光一(東京農工大学)


ツキノワグマ(以下クマ)の人里域への大量出没が起きた年は、晩夏から秋の出没数の増加が顕著であることが知られている。また、出没の程度にはクマの秋の主な食物であるブナ科堅果の結実程度が影響していることが報告されている。よって、クマの大量出没のメカニズムの解明には、クマの秋の行動について詳しい情報を得ることが必要である。

そこで、本研究では足尾山塊において2006・2007年にGPSテレメトリー首輪を装着したクマ(各年5個体)のGPS測位データを使用して、個体ごとに秋期(06:8月末−10月, 07:9−12月)の月毎の行動圏(95%カーネル)に対して、同じ月の集中利用域(50%カーネル:以下コア)がどのような場所を選択していたのかを、ランドスケープとミクロハビタットの2つのスケールで解析を行った。生息地環境の指標として、ランドスケープスケールの解析では環境省作成の植生図を、ミクロハビタットスケールでは現地調査による樹種ごとの胸高断面積合計を使用した。

ランドスケープスケールの解析ではどの年も全体(06:n=14,07:n=15)の約1/3のコアで、秋期にクマの食物となる樹種が他の植生タイプより多いとは期待できない植生タイプ(自然裸地など)のみを選好的に利用していた。しかし、ミクロハビタットスケールでの解析では、各年、1つのコアを除いたすべてのコアでブナ科樹種が多い場所を選好的に利用していた。以上より、この地域のクマは秋期に、ランドスケープスケールでどんな植生タイプの場所を集中的に利用していても、ミクロハビタットスケールで見れば同じ植生タイプの場所の中でもブナ科樹種が豊富な場所を集中的に利用していたといえる。


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