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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-589

アズキゾウムシによる階層的Y-modelの検証

*柳真一(九大・博物館), 津田みどり(九大・生防研)


母親は自身の適応度を増加させるために、卵サイズを低下させるなど、子の適応度を犠牲にする親子間コンフリクトがあることが知られている。一方、子は限られた卵資源量(環境要因)において、自身の適応度を最大限にするような遺伝的反応(遺伝要因)が有利となる。一定の悪環境にさらされた集団では、適応度を挽回させるように遺伝―環境交互作用に選択が作用すると予想される。高密度下で飼育された集団は高密度環境下において、反対に低密度環境にある野外集団では低密度環境下で適応度が高くなるような、密度依存的進化をするはずである。本研究ではアズキゾウムシの父親2系統(室内系統jCと野外系統yoC)を用い、高・低密度で飼育した近交系の母性効果と子の適応度要素に遺伝―環境交互作用あるかを検証した。

子の発育期間に対して、母親の生育条件×卵サイズ×父親系統の3次の交互作用が有意であり、卵サイズの変化に対する発育期間の遺伝子の反応が系統間で異なることが示された。母親が低密度で生育されたときには、父親がjCのときには卵サイズの減少に伴って発育期間が延長されたが、父親がyoCのときには発育期間は卵サイズとは独立であった。しかし、母親が高密度で飼育されたときには、jCとyoCの関係が逆になった。

卵サイズに対する子の発育期間の遺伝子型の反応の変異は検出されたが、母親の生育条件によって反応は異なっていた。これは母性効果と子の遺伝子型の関係が、それぞれの系統に作用した過去の選択圧によって変化することを示唆している。


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