ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-590
松原史(熊本大・院・自然科学),逸見泰久(熊本大・沿岸域センター)
ウミホタルは、貝形虫亜網ウミホタル目の甲殻類で、アマモが生えるような砂泥質の海に生息する。夜行性で、昼間は砂に潜っており、夜になると活動し、ゴカイや魚の死骸などを食べている。体長は成体で約3mmで、二枚貝状の殻で体全体が覆われている。ウミホタルの殻は透明なため、背甲内に産卵した卵の状態や、寄生虫の有無を生きたままの状態で観察することができる。
ウミホタルの寄生種として、甲殻類や原生生物がよく見られる。その中でも最も目立つのがウミホタルガクレである。ウミホタルガクレは等脚目甲殻類の一種で、体長はオスで1mm、メスで1.5mm程度である。ウミホタルガクレは、雄性先熟の性転換をする生活史を持ち、メス化すると体が膨れて体節は不明瞭になり、付属肢が退化して体の大部分が卵巣になる。本研究では、まず、ウミホタルとウミホタルガクレの生活史の関わりを明らかにするため、2007年4月から翌年8月まで、毎月の定量採集を行い、両種の個体群動態に追った。その結果、ウミホタルの繁殖期は4〜10月であること、冬になると大部分のウミホタルのオスは死亡し、わずかなメスが越冬して翌年の繁殖期まで生存することがわかった。また、ウミホタルガクレの寄生率は特に春に高かったが、これは寄生できる宿主(越冬個体)が少なくなるためと考えられた。
次に、メス化の至近要因を明らかにする実験を行った。その結果、ウミホタルガクレは単独で寄生していても、ウミホタルの卵を捕食するとメス化するということが明らかになった。このように、ウミホタルガクレの寄生生態は、ウミホタルの生活史と密接な関わりを持っていた。