ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-591
太田 宏(東北大 生命科学)
小型サンショウウオ類の陸上での生活については、いまだに不明な点が多い。非繁殖期に繁殖場所である水辺からどの程度離れた場所を生息場所としているのかについても断片的な情報があるだけである。テレメトリー法の小型サンショウウオへの適用については、電波発信器の大きさ、取り付け方法などが問題となる。
演者は1997年より繁殖期、及び繁殖期直後のトウホクサンショウウオのテレメトリーによる追跡を行っている。4月〜5月にかけて、仙台市郊外の泉ヶ岳(標高800m)の産卵場所に出現した個体を捕獲し(生重量4〜6gのもの)、電波発信器(0.5g)を取り付け、採取した地点に放逐した。その後、24時間ごとに受信機で探知して、サンショウウオの位置を確認した。発信器の取り付けは尾の側面に縫合用の絹糸またはナイロン糸を用いて縫いつける方法とした。
121個体を調査したところ、59個体については5日未満で脱落したが、32個体については10日以上にわたって追跡することができた(最長26日)。また、移動距離では最長の98mを記録した個体の他に、70m以上追跡できた個体が2例、60m程度が4例、その他にも40m以上が8例観察できた。これらの中には盛んに移動している途中で発信器が脱落した例もあり、トウホクサンショウウオの移動距離は、今回得られた数値よりもさらに大きいと考えられる。その一方で,追跡末期に狭い範囲に留まったり、逆戻りする行動も見られたことから、テレメトリーによって繁殖期直後に定着する生活場所がある程度明らかになったのではないかと考えている。それら滞留地点の繁殖池からの距離や方向は個体によってまちまちであった。また、個体が産卵池から分散する方向にも特定の傾向は見られなかった。