ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-613
*畑憲治(首都大院・理工・生命), 宗芳光(小笠原亜熱帯農セ), 加藤英寿(首都大院・理工・生命), 可知直毅(首都大院・理工・生命)
外来植物のリターの堆積は、物理的障害やアレロパシーなどを介して在来植物の定着を阻害することがある。しかしながら、この外来植物のリターの影響に関して、野外における現象観察と実験的なアプローチの結果は必ずしも一致しない。本発表では、小笠原諸島に侵入している外来木本種のモクマオウのリターの堆積が、在来木本種のヒメツバキの種子発芽と初期成長に及ぼす影響を2つの実験的なアプローチから明らかにした。
野外実験では、モクマオウ林と在来林の林床において、リターの除去処理が、播種したヒメツバキの種子からの出現実生数に与える効果を検証した。圃場実験では、土壌(モクマオウ林、在来林)、リターの種類(モクマオウ、在来種)、リターの堆積量(3段階)の3要因が、播種した種子からの発芽実生数とその個体サイズに与える効果を検証した。
野外実験では、モクマオウ林の林床におけるヒメツバキの出現実生数は、在来林におけるそれよりも有意に小さかった。林床のリターの除去は、実生数を増加させる傾向が見られたが、統計的に有意な効果は検出されなかった。圃場実験では、発芽実生数とその乾燥重量(鉢あたり、個体あたり)は、土壌、リターの種類に関わらず、 リターの堆積量が多い処理において小さかった。
以上の結果は、ヒメツバキの種子の発芽と初期成長は、少なくともモクマオウのリターの堆積によって物理的に阻害されていることを示唆する。また、野外におけるヒメツバキの出現は、リターの堆積による物理的な阻害以外の要因によっても阻害されている可能性がある。