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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA2-623

外来植物の侵入による植物相の地域固有性の喪失

橋本佳延(兵庫県立人と自然の博物館)


<はじめに>

日本の植物相の組成は地域よって違いがみられ複数の植物区に分けることができる(前川 1977).本研究では,国内の主要河川の在来植物相が前川(1977)(本州地域で7区系)や環境省(1997)(同地域で8区域)などの既報の植物区系によって区分が可能か検証するとともに,外来植物の侵入によって各植物区系の植物相の地域固有性がどの程度損なわれるのかを明らかにすることを目的とした.

<方法>

河川水辺の国勢調査の主要123河川の植物相データ(2カ年分)を用い,3430(外来704,在来2726)種を解析対象とした.各河川の在来植物相をデータセットとし,多変量解析(DCA)を行い,前川(1977)や環境省(1997)の示す区系区分が可能か検証するとともに,河川の在来植物相に適した区系を検討した.また,この結果と全種植物相をデータセットとした同様の解析の結果とを比較し,外来種の侵入による植物区系への影響を判定した.

<結果および考察>

DCAの結果,前川(1977)については蝦夷-陸奥地域区系およびソハヤキ地域区系が,環境省(1997)については道東区域,道西区域,本州中北部太平洋側区域,紀伊半島・四国・九州区域がDCA2軸に沿って明瞭に区分されたが,残りの区系・区域については重なりが多く不明瞭であった.DCA2軸は気温傾度と高い相関関係を示しており,河川の在来植物相の植物区系は気温傾度に沿って1:北海道,2:東北北陸,3:関東,4:中部・近畿・中国,5:九州・四国・南紀の5つに区分するのが適当と考えられた.この5区系は,外来植物相を含む全種植物相のデータセットの解析結果では3,4,5の区分が不明瞭となり,外来種の侵入により植物相の地域性の喪失が起こっている可能性が示唆された.


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