ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB2-648
*三宅(村山)恵子(新潟大学女性研究者支援室),Matthew S. Olson(University of Alaska Fairbanks,USA)
雌性両全異株性は、両全性個体(以下両性個体)のみからなる種に雌個体が生じ維持されていると考えられている。雌個体は花粉による適応度を失う代わりに、資源を雌機能にまわす繁殖補償と自殖による近交弱勢を被らないという利点がある。両性個体の自殖率は近隣個体の性比(両性個体の比率)に大きく影響されると考えられる。両性個体の比率が低いところでは自殖率が高くなりそれに伴い近交弱勢が生じ適応度が低下すると予想される。そこで我々は、ナデシコ科Silene vulgarisを用いて性比の異なる実験集団を野外に設置し、性比が両性個体の自殖率と両性個体・雌個体の適応度に与える影響を調べた。自殖率はマイクロサテライトマーカーを用いて推定し、適応度は結果率、種子生産数、種子発芽率を計測し、性比との関係を解析した。その結果、両性個体の自殖率は両性個体の比率の減少にともない増加していた。適応度については、雌個体では結果率と種子生産数で両性個体の比率の増加に伴い増加していたことから、花粉制限があったと考えられる。両性個体では結果率と性比に相関はみられなかったが、種子生産数は両性個体の比率の増加に伴いわずかながら減少しており予想に反する結果となった。種子発芽率は雌個体と両性個体では違いはみられず性比との相関もみられなかったが、両性個体の自殖種子と他殖種子で比較すると有意に自殖種子で低かった。これらの結果に基づき、雌性両全異株性の維持における性比と自殖率および近交弱勢の影響について考察する。