ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB2-669
*松下通也, 戸丸信弘 (名大院・生命農)
植物において性淘汰がどのように作用しているかを理解するためには、雄間競争の存在と程度を評価することが重要である。受精段階における花粉管競争や、発達途中の未成熟果実段階において母植物からより多くの資源を得ようとする兄弟間の競争は、厳しい環境条件下においてより激しいと予測される。この予測を検証するために一つの個花あたり一つの胚珠を持つ雌雄異株低木シロモジを材料として、異なる光環境下(林冠閉鎖、ギャップ)に生育する雌親それぞれ3個体の花序に対して、ランダムに選定した雄5個体から採取した花粉を単一雄親のみ交配させた場合と複数雄親を交配させた場合とで比較した。その結果、結果率・果序あたり果実数は閉鎖林冠下よりもギャップ下で有意に高く、また種子乾重・果肉乾重もギャップ下で大きかった。これらの結果から光が雌の繁殖を制限していることが示唆された。交配処理間で比較した場合、いずれの光環境下においても単一雄親の花粉よりも複数雄親の混合花粉を受粉させた花序の方が果実あたり種子乾重は有意に大きかった。閉鎖林冠下では複数雄花粉処理区よりも単一雄花粉処理区で結果序率が有意に低かったが、ギャップ下ではそれらに有意な差は認められなかった。この結果は利用可能な資源(光)が制限された環境条件において雄間競争はより強く働くという予測を支持するものと考えられる。また、果序内における兄弟間の種子乾重のばらつきに対する光環境の効果は認められなかったが、交配処理の効果は有意に認められ単一花粉処理における変動係数が小さかった。この結果は全兄弟間よりも半兄弟間の競争の方が強く作用している可能性を示唆するものと考えられる。