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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB2-673

標高の違いがアカエゾマツの針葉形態・生理・遺伝構造に与える影響

*飯島勇人(北大院農),北村系子(森林総研北海道),石塚航,後藤晋(東大院農)


標高の変化に伴い環境は著しく変化し、樹木の形質も大きく変化するが、これらの変異が可逆的なものか不可逆的なものか検討した例は少ない。標高に伴う樹木の形質変異の要因を明らかにすることは、環境の変化に対する樹木の順応機構を解明する上で重要である。そこで本研究では、幅広い標高域で生育するアカエゾマツ(Picea glehnii)を対象に、北海道中央部に位置する東京大学北海道演習林において、平均気温、湿度、散乱光に占める紫外線の割合、土壌のA層のCN比を各自然個体群において測定し、標高に伴う環境の変化を評価した。そして、個体群間のアカエゾマツ針葉の形態および生理特性の変異を、演習林内の自然個体群と同一産地の苗木を4つの標高域(530m、730m、930m、1100m)に植栽した試験地の両方で調べた。自然個体群は約300m〜1400mの標高域に10の個体群を選定したが、同一の土質上の個体群を発見することが困難であり、砂質土壌、湿地、岩礫の3種類を含んでいた。

標高の増加に伴い、平均気温が低下し、散乱光中の紫外線の割合が増加した。標高別試験地では標高の増加に伴い、1年生葉のSLA(葉面積/葉重量)は減少し、葉密度(葉数/枝長)は増加した。自然個体群においては、土質、各調査地による変異、個体差の影響を考慮した階層ベイズモデルを用いて標高の影響を評価した結果、葉密度は標高の増加に伴い増加したが、SLAは各調査地による変異が大きく、標高の影響は見られなかった。本研究の結果から、気温が低く紫外線の割合が高い高標高域では、厚い葉を密度高くつけることで順応している可能性が考えられた。ただしSLAの変異については他の環境条件や遺伝構造の影響を検討する必要がある。


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