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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB2-674

冷温帯落葉広葉樹林主要構成種4種おける生育段階ごとの空間分布

*上野直人,寺原幹生,清和研二(東北大・院・農)


森林の樹木の分布は、資源、かく乱の履歴、種間・種内相互作用といった生態的プロセスの結果である。これゆえ樹木の分布構造を分析することは野外で生じているこれらの生態的プロセスが樹木の生活史にどのくらいの影響をもつのかを明らかにする上で有用である。複数の生態的プロセスが樹木の分布に比較的大きな影響を及ぼしている場合、ひとつのプロセスによる場合よりも複雑な分布構造を生じさせると考えられる。観察された樹木の分布構造から、それを生じさせた複数の生態的プロセスおよびその影響の大きさを推定することはしばしば困難であるが、近年発達しつつある空間統計手法を用いてこれを試みることは価値があるだろう。

われわれは、冷温帯ブナ林に6haの調査プロットを設置し、樹木の分布を詳細に調査した。プロット内にはブナ、ミズナラ、クリおよびトチノキが優占し、ブナとトチノキは斜面下部、ミズナラとクリは尾根に多く生育していることが明らかになった(ただし資源量の分布とは無関係)。また、ミズナラ、クリおよびトチノキは生育段階が違っても同様の立地に出現するのに対し、ブナでは、実生や稚樹が成木よりも尾根に近い立地で多かった。当調査地は、戦後以来保護されているが、それ以前は里山として供用されていたものと考えられる。尾根付近では山火事あるいは火入れの跡も見られ、ミズナラとクリの繁茂はそのような大規模かく乱の結果かもしれない。現在は、ブナが次第に尾根に侵入していく過程だと推定される。

本研究では、さらに種子散布制約やヤンツェン・コンネル過程といった生態的プロセスが分布にどのような影響を及ぼしているかについて検討する。


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