ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-335
*福森香代子(京大生態研), 酒井陽一郎(京大生態研),兎本博介(龍谷大理工),陀安一郎(京大生態研),奥田昇(京大生態研)
近年、世界中の湖沼において、人為撹乱による生物多様性の低下および生態系機能の劣化が懸念されている。しかし、生物多様性が生態系機能に影響を及ぼすメカニズムの詳細は明らかになっていない。また、生態系機能を評価するには、あらゆる生態系で測定可能な普遍的指標を用いる必要がある。そこで、我々は、生態系機能の指標として、生物群集全体の代謝を表す「生態系メタボリズム」に着目した。一般に、生物の体サイズと代謝速度の間には一定のスケーリング則(アロメトリー)が成り立つ。即ち、代謝量は生物の体サイズとともに増加するが、単位体重あたりの代謝量は体サイズとともに減少する。また、代謝速度は体サイズともに遅くなる。従って、相対的に小さな生物で構成される群集ほど、生態系全体の代謝量が大きく、時間変動性が高くなることが予測される。この生態系メタボリズムのスケーリング則を検証するとともに、湖沼の生物多様性が生態系メタボリズムに与える影響を定量的に評価することを目的として、琵琶湖の生物群集を内包した室内メソコスム実験を実施した。本研究では、生物多様性の効果として高次捕食者である魚類の摂餌機能の多様性(魚類不在、プランクトン食魚、ベントス食魚、両種混生の4実験区)を操作することにより、生物群集のサイズ構造と生態系メタボリズムに及ぼす栄養カスケード効果に焦点を当てた。予備実験の結果、魚類の摂餌機能多様性がプランクトン群集のサイズ構造と生態系メタボリズムに影響する傾向が認められたが、そのアロメトリー関係には大きなバラつきが見られた。「サイズ構造‐生態系メタボリズム」アロメトリーは、群集内で一定の捕食−被食関係が成立していることを仮定する。従って、予測されるアロメトリーからのずれは、捕食者‐被食者相互作用の変化に起因すると推察された。