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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-344

根と葉の分解にともなうトビムシ群集の遷移

*藤井佐織(京大院・農), 武田博清(同志社大・理工)


森林生態系において植物リターは土壌動物に食物と住み場所を提供する。リターは分解に伴って変化し、その結果、異質性の高い資源を土壌動物に提供する。これまでリターの質の違いや分解にともなう変化が土壌動物群集構造に影響することが示されてきた。しかし、これらのほとんどは地上部からのリターについて行われたものであり、地下部からのリターは考慮に入れられてこなかった。細根は森林生態系において葉と同じかそれ以上のリター供給を担っていると言われ、土壌動物にとっての資源としての役割も大きいと考えられる。そこで本研究では細根分解にともなうトビムシ群集の遷移を葉におけるそれと比較した。

京都大学上賀茂試験地のヒノキ林において、リターバッグ法を用いて根と葉の分解にともなうトビムシ群集の遷移を調べた。地表に供給される落葉と異なり、細根リターは土壌中に供給される。そこで、分解場所の違いを分離して評価するため、根と葉それぞれについて地表におく処理と土壌中におく処理を用意した。設置後、3ヶ月おきに回収し、トビムシ類を抽出し、種まで同定した。リターに関しては乾重、含水率、化学成分を測定した。

地表においたリターと土壌中においたリターの間でトビムシ群集の組成と個体数密度が隔たっており、群集は主に分解基質の置かれた場所の違いにより決定されていると考えられた。しかし、分解場所に関わらず、葉リターでは分解の進行に伴って個体数密度が増大し、群集の組成も遷移したのに対して、根リターでは個体数密度と群集組成は相対的に安定していた。これらの違いは根と葉の成分と分解速度の違い、したがって資源としての動態の違いを反映していると考えられた。これら根と葉のリターバッグ実験により、リターが供給される場所や基質間の分解様式の違いがトビムシの多様な生息環境の実現に寄与していることが示された。


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