ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-369
*唐真盛人(東海大院,人間環境)・水谷晃・崎原健・河野裕美(東海大,沖縄地域研究センター)・北野忠・内田晴久(東海大,教養)
本研究では、良好な止水環境を好み、水田内での高次消費者であるゲンゴロウ類に着目し、西表島における種組成や生息環境、季節・農事暦の変化に伴う消長を調べた。2007年5月と9月(水がある時期)に、水田、ため池、水路などの人工的湿地69ヵ所で、中・大型種を採集した。さらに、このうち農法の異なる3地点では、5月〜12月までの間2週間に1度、定量調査を行った(以下、種名のゲンゴロウを省略)。
その結果、7種延べ899個体が確認され、優占種はウスイロシマ(38.0%)とオキナワスジ(35.3%)であった。一方、ヒメフチトリは1個体のみで、フチトリは確認できず、絶滅に近い状態にあった。また、水田内や際で雑草が繁茂する水田で4.12個体/m2と最も多く、次いで水田放棄後の湿地帯で3.80個体/m2であった。これらの環境を好む理由として、植物により身を隠すことができ、捕食者からの危険回避、あるいは摂餌効率の向上につながると考えられた。
定量調査を実施した3地点のうち、水牛を用いて田起こしを行うため、常に水がはられた水田と周辺の湿地を含めた一帯では、毎回、大型ゲンゴロウ類の幼虫が平均0.43±0.21個体/m2出現した。即ち、大型種は季節にかかわらず、長い繁殖期を有すると考えられた。一方、他の2地点では、コンバインを使用するため、刈入れ前に水田内の水が完全に抜かれる。ここでは、水のある時期にのみ成虫と幼虫が各々平均0.81±0.47個体/m2と0.11±0.03個体/m2が出現し、乾田期にはどちらも確認できなかった。ところが隣接するため池では、乾田期にのみ成虫が平均18.0±0.57個体/m2出現した。これらのことから、水田の抜水時には、成虫は一時的に避難すること、また移動能力のない幼虫は死滅することが示唆された。