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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-370

稲田における養魚密度が生物群集の動態に与える影響

*鶴田哲也, 井口恵一朗, 棗田孝晴, 武島弘彦(中央水研), 小池亮人(東海大)


米と魚を同時に生産する稲田養魚は限られた土地で食料生産性を向上させる農法の一つであり、日本においても古くから長野県佐久地方を中心に実践されている。稲田における魚の養成は、その直接的・間接的な働きかけによって水田の生物群集構造やイネの生育に様々な影響を及ぼすことが知れられている。本研究では、稲田養魚生態系における養魚密度の影響を評価するために、実験水田を用いてイネの栽培を行った。4×9.9mの水田4筆を直列に配した試験池4面を用意し、各池の3筆の水田には体重約10gのフナをそれぞれ0.5、1、2kg添加し、残りの1筆は対照区として無添加とした。肥料の投与は最小限に留め、無農薬、無給餌条件下で、稲田養魚を実施した。

底生無脊椎動物の個体数やその多様性には養魚密度の影響は認められなかった。養魚水田では、魚の密度にかかわらずウキクサ類の繁茂がほとんど認められなかった。これは、フナの摂食によりその増殖が抑制されたためであると考えられる。養魚密度の増加とともに水田水中の濁度は高くなり、アオミドロの発生量は減少した。これは、フナの活動が水田水を撹拌し、アオミドロの光合成を阻害したためであると考えられる。また、養魚密度の増加とともに、水田水中の栄養塩類の濃度も増加する傾向が認められた。米の収量は対照区よりフナ添加田のほうが優るものの、その差は有意ではなかった。しかし、8月には養魚密度の増加とともに植物プランクトンの現存量も増加する傾向が認められた。実験期間中のフナの成長量は高密度であるほど低く、2kgのフナを添加した水田では体重の増大がほとんど認められなかった。したがって、米と魚の両方の生産性を向上させるためには、フナを低密度で養成する方式が適切であると考えられる。


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