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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-382

イワフジツボの個体群動態:増加率に影響するプロセスの時空間的変動

*深谷肇一(北大環境),野田隆史(北大地球環境),仲岡雅裕(北大FSC),山本智子(鹿大水産),堀正和(瀬戸内水研),奥田武弘(東北水研),熊谷直喜,島袋寛盛(千葉大自然科学)


個体群動態の理解や予測のためには、個体群の長期変動データから内的自然増加率と密度依存性を解析することが有効な方法である。これらの個体群プロセスが季節的、空間的にどのように変動するかを明らかにすることは重要な課題であるが、これに取り組んだ研究は少ない。本研究では岩礁潮間帯の固着動物であるイワフジツボを対象に、メタ個体群に存在する多数の局所個体群で内的自然増加率と密度依存性を推定し、これらの季節性や変動の空間スケール、環境要因との関連を明らかにした。

岩手県山田町、大槌町、釜石市の太平洋沿岸に5つの調査海岸を設置した。海岸ごとに5つの岩礁をランダムに選び、イワフジツボの垂直方向の分布範囲をカバーする永久プロットを設置した。各プロットにおいて、2002年から2008年にかけて毎年春と秋に個体群の被度を測定した。プロットごとに5つの環境変数(波あたりの強さ、堆積速度、方位、傾斜、凸凹度)と年間の幼生加入量を測定した。データには状態方程式が階層化された状態空間モデルがあてはめられ、内的自然増加率、密度依存性、誤差分散の季節差や空間変動の大きさ、環境変数および幼生加入量との関連を検証した。パラメーターの事後分布はMCMC法によって推定した。

個体群プロセスおよび誤差分散の大きさにはそれぞれ明瞭な季節性が示された。内的自然増加率と密度依存性はそれぞれ岩礁間、海岸間スケールで同じ程度空間的に変動し、パラメーターと環境変数および幼生加入量の間の関連を示す強い証拠はほとんど得られなかった。これらの結果から、イワフジツボの局所個体群動態の決定機構には明瞭な季節性があること、空間変動のパターンは複雑であることが明らかとなった。


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