ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-385
*鈴木竜太郎(東邦大学・理),多留聖典(東邦大学東京湾生態系研究センター),風呂田利夫(東邦大学教授)
カイヤドリウミグモNymphonella tapetis Ohshima,1927は幼体時にはアサリなど二枚貝の外套内で寄生生活を、成体は干潟の砂中で自由生活をするイソウミグモ科の節足動物である(大島,1939;Kikuchi,1976;Ogawa & Matsuzaki,1985)。我が国では1930年以降天草や福島県などで発見されている。そして2007年4月に千葉県木更津市小櫃川河口をもつ盤洲干潟において二枚貝への寄生が発見された(多留ほか,2007)。
本種の東京湾内の分布状況調査を2008年8月に小櫃川河口、牛込、船橋市ふなばし三番瀬海浜公園、習志野市谷津干潟、東京都江戸川区葛西臨海公園、神奈川県横浜市海の公園の6か所の干潟で実施した。その結果、盤洲干潟に位置する小櫃川河口干潟と牛込においてのみ本種の寄生が確認され、東京湾内での分布は現在のところ盤洲干潟に限られていた。
また、寄生率の季節変化を小櫃川河口干潟において2008年4月から9月まで毎月調査した。採集した二枚貝はホトトギス、ウメノハナガイモドキ、シオフキ、バカガイ、ヒメシラトリ、マテガイ、カガミガイ、ハマグリ、アサリ、オオノガイ、ソトオリガイの10種で、そのうち寄生が確認されたのはアサリとシオフキの2種のみであった。2種ともに春から夏にかけて寄生率が上昇し、6〜7月に最大値(アサリ:17.4%、シオフキ:69.6%)となり、9月にはそれぞれ4.6%、0.0%まで減少した。また6月と7月、9月の調査では成熟した自由生活個体が採集され、抱卵した個体が5月、7月、9月に1個体ずつ採集された。これらからカイヤドリウミグモは春から夏にかけて成長・繁殖し、宿主を増やしながら密度を増し、その後水温の低下とともに密度が減少する季節性を示すことが明らかとなった。