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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-392

東京郊外におけるタヌキとハクビシンの食性比較

*立脇隆文(麻布大・獣医), 笹岡直子(東大・農・生物多様性), 高槻成紀(麻布大・獣医)


都市や里山に生息する中型食肉目は、自然の食物と合わせて、人工食物(ゴミ・農作物・果物)を効率的に利用している。日本の都市郊外には、タヌキ、アナグマ、ハクビシンなどが生息しているが、複数種が同所的に生息する場合、食物をめぐる種間競争や食物分割などの現象が生じるはずである。本研究は、このうちタヌキとハクビシンをとりあげ、2種の食物分割を調べることにした。調査地は東京都町田市と神奈川県相模原市で2007年10月〜2008年9月に回収された交通事故個体の胃内容物(タヌキ80、ハクビシン61)をポイント枠法で分析した。タヌキは季節に合わせて節足動物・果物・ゴミを利用していた。ハクビシンは季節に合わせて節足動物・軟体動物・果物を利用していた。2種間の食物の重複は秋に高く(Piankaの重複度指数O=0.89)、他の季節は低かった(O=0.31〜0.51)。秋の重複の大きさは、果物(特にカキ)と節足動物の多用によると思わるが、いずれも調査地内に散在的に豊富に存在することを考えると、2種間での食物をめぐる競争は少ないと考えられた。その他の季節には、タヌキはゴミや農作物を、ハクビシンは果物や軟体動物を多く利用したために、食物重複が低くなったと考えられた。果物はどちらの種も多く利用していたが、ハクビシンは冬から春にかけて柑橘類を、夏にビワをタヌキよりも多く利用していた。柑橘類は長い間落下せず樹上にあることを考えると、ハクビシンの樹上性が柑橘類を利用可能にしたと考えられた。以上のことから、都市郊外に生息するタヌキとハクビシンは人工食物を多く利用するが、基本的な食性は既往研究と同様で、タヌキは地上にある食物を日和見的に採食する雑食、ハクビシンは樹上を利用する果実食という点で特徴的であり、この違いが両種の共存を可能にしている可能性がある。


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