ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-393
*斎藤昌幸(中央農研/横国大),百瀬 浩,仲谷 淳(中央農研),浅田正彦(千葉県生物多様性センター),植松清次(千葉農総研)
千葉県ではイノシシによる農作物被害が深刻になっており、適正な管理が求められている。そのための基礎資料として、千葉県に生息するイノシシの繁殖特性を知る必要がある。千葉県では年2回(春と秋)の繁殖ピークが指摘されているが、研究期間が短いため、経年変化についても不明である。そこで、本研究では、2002-2007年度(6年間)の有害鳥獣捕獲個体の捕獲票データを用いて、妊娠と子どもの出現から出産時期を明らかにした。
分析は性別、妊娠の有無、体重、捕獲日のすべてが記入してあるものを対象とし、30kg以上のメス個体の妊娠の有無を、また体重10kg以下の子どもの出現数を、月別に集計した。
その結果、毎年5月頃に妊娠率のピークが見られ、その後の6-8月頃に出産していると考えられた。しかし、2002年度については12月にも妊娠のピークが見られ、2006年度については1年を通して比較的高い妊娠率を示したことから、年度間にばらつきが見られた。一方、捕獲数に占める10kg以下の個体数割合は毎年8月頃に大きなピークが、また、2月頃には小さなピークが見られ、年度間に明白なばらつきは見られなかった。これらのことから、千葉県に生息するイノシシは主に6-8月頃に出産するが、一部の個体は12-2月頃に出産している可能性が考えられた。年2回の出産期が認められたが、秋とされていた出産期が本研究では冬と推定されるなど、先行研究とのずれも見られた。
本発表ではさらに解析をおこない、先行研究や他地域との比較などもおこないながら議論する。