ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-396
*益子美由希(筑波大・生物), 徳永幸彦(筑波大・生命共存)
関東平野において、夏場混群となってコロニーで繁殖するサギ類6種の食性には、各種の形態的特徴と関連した種間変異が知られている。アオサギ、ダイサギ、コサギ、ゴイサギは魚類主食でイネ田、ハス田、河川などの水域を、チュウサギ、アマサギは昆虫主食で畦などの陸域を主な餌場とする。6種の構成比はコロニーによって異なるが、それはどのような要因から決まるのだろうか。
各種に主食があるならば、例えば「周辺に畦面積が大きいコロニーではチュウサギとアマサギの個体数が多い」というように、周辺のある餌場環境の面積にサギ類の個体数が応答すると予想される。しかし、コロニーの種別個体数と周辺のある餌場環境の面積との間には常に相関がみられるとは限らない(Tohyama 2005)。そこで本研究では、サギ類コロニーの種構成比が周辺の餌場面積比と対応しないのは各種の食性が主食に固定されていないためであるという仮説を立て、その検証を行った。
調査は、2008年の繁殖期に、茨城県内の6ヶ所のコロニーにおいて行った。各コロニーで6種の構成比と周辺10km圏内の餌場面積比を調べた結果、コロニー間で種構成比が異なったのに対して、餌場面積比は一様であった。また、サギ種を判別できた巣の下にネットを設置し、巣から落下した餌を採集して食性を巣ごとに調べた。その結果、(1)同種の巣間と異種の巣間の間で食性に有意な差がなかった。(2)同コロニーに属する巣間の方が異コロニーに属する巣間よりも有意に食性が異なった。(3)同コロニーに属する同種の巣間で有意に食性に変異がみられた。
以上のことから、サギ類は各個体が主食に限らず様々な餌生物を捕食しているとわかった。このことは、サギ類コロニーの種構成比が周辺の餌場面積比に対応しない理由の一つと考えられる。