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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-397

相互につながりを持つカワウのねぐら・コロニーの個体数変化

*熊田那央,山口典之(東大・農),加藤ななえ(NPO法人バードリサーチ),金井裕((財)日本野鳥の会),藤田剛,樋口広芳(東大・農)


カワウは1980年以降、個体数増加に伴ってアユの補食などの漁業被害や、ねぐら場所での樹木枯死被害などが問題とされるようになり、各被害場所で対策や調査が多く行われている。一方、カワウは広域を移動する種で、ねぐら・コロニーの増加や場所の移動が頻繁に起こっているにも関わらず、その分布変化への影響評価はほとんどなされていない。根本的な被害対策のためには、この移動分散を踏まえて分布変化を理解する必要がある。

本研究では、カワウの個体群管理を目的とし、階層ベイズモデルを用いて、ねぐら・コロニーの分布変化を説明するモデルを作成した。解析には、97年から08年の3月に関東地域にあるねぐら・コロニーで行われた個体数カウントの結果((財)日本野鳥の会・NPO法人バードリサーチ,未発表)を用いた。ねぐら・コロニーにおける個体数変化を、繁殖による個体数の増加と他のねぐら・コロニーとの移出入から説明するモデルを作成し、移出入は周辺のねぐら・コロニーの個体数および環境要素に影響を受けると仮定した。また、それだけでは説明できないばらつきをランダム効果として組み込んだ。

その結果、コロニーでは内的自然増加率の場所間での差がみられ、その要因として採食環境や、撹乱、営巣履歴などが影響していることが示唆された。また、移出入においては周辺の個体数や採食環境がスケールによって異なる影響を及ぼしていた。総合的にみて関東地域のカワウの移動は東京湾沿いから内陸へと広がる傾向がみられた。また、近接した場所間でも移出入数に大きな差があることが示され、場所間の差と対策の影響に関係がある可能性が考えられた。


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