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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-402

密度との関係性から見たアユの縄張り形成と崩壊

*田中裕美(兵庫県大・院環境人間学),中桐斉之(兵庫県大・環境人間),井口恵一朗(中央水研),泰中啓一・吉村仁(静岡大・創造院)


「友釣り」で知られるアユは川の中流で縄張りを作って成長するが、他の縄張りを持つ動物とは違い、アユの縄張りは簡単に形成や崩壊が起こる。この形成と崩壊について、アユの個体群密度という観点から、モデルによる解析を行った。モデルではアユに縄張りを持つ「縄張りアユ」、縄張りを持つことができない「あぶれアユ」、「群れアユ」の3種類がいると定義する。そして3種類のアユが利用する餌場は異なり、縄張りアユはいい餌場である「早瀬」を、あぶれアユは悪い餌場である「淵」を、群れアユは群れで移動しながら「早瀬」をそれぞれ利用する。それぞれの餌場から得られるベネフィットと、それぞれアユの採餌におけるコストから、コスト−ベネフィットモデルを構築して解析を行った。その結果、縄張り形成と崩壊が起こる密度は一定の値ではなく、その臨界点には大きなずれがあることが分かった。前回の発表では、使用したパラメータが完全な推定値であったため、実際の現象とかけ離れている点があった。そこで今回は、実際のアユの行動に即したものにするため、観察データから得られたパラメータを使用し、再解析を行った。今回の結果では、モデルから得られた結果と、実際の縄張り崩壊が起こったときの観察データとを比較したところ、これらは合致した。アユは縄張りの有無が成長に大きく影響するため、アユの放流事業においてはアユの密度と行動パターンを管理することはとても重要である。この観察データからの密度推定の結果は、その指針を与えるものとなる。


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