ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-408
*仲澤剛史(台湾大・海洋研),酒井陽一郎(京大・生態研セ),謝志豪(台湾大・海洋研),小板橋忠俊(京大・生態研セ),陀安一郎(京大・生態研セ),山村則男(地球研),奥田昇(京大・生態研セ)
体サイズ−栄養段階の関係の時間変化を理解することは、サイズ依存的な捕食作用がどのように個体群動態や群集動態を駆動するのかを理解することにつながる。しかし、サイズ依存性といった個体変異を組み込んだ栄養動態の詳細な時系列データが得られていないため、体サイズ−栄養段階の関係がどのように時間変動するのか、そもそもそれが時間変動するのか否かも不明である。そこで本研究では、琵琶湖産淡水ハゼ科魚類イサザGymnogobius isazaの保存標本を用いて、その窒素安定同位体比(δ15N)を分析し、栄養段階のサイズ依存性の40年以上にわたる長期変動を報告する。ここでは、栄養段階のサイズ依存性は、δ15Nを体サイズの対数値に対してプロットしたときの傾きによって定義する。分析の結果、体サイズのサイズ依存性は多くの年で有意に正の値をとり、その値は毎年大きく変動した。加えて、栄養段階のサイズ依存性は、(1)餌の種類や(2)餌の量、(3)魚個体群のサイズ構造の変化によって変動する可能性も示された。本研究の結果は、体サイズに基づいた食物網解析に重要な情報を与えるとともに、サイズ構造のある食物網動態をより完全に理解するためには、体サイズ−栄養段階の関係を説明する主要因を特定し、その影響を定量化する必要性があることを示唆する。