ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-415
*田島文忠(昭和環境システム),松村和音(東海大院・人間環境),大木悦子(あいかわ自然ネットワーク),北野忠,内田晴久(東海大・教養)
神奈川県愛川町尾山耕地において、水田の管理方法の違いが水質や水田の生物保全機能にどのような影響を与えているかを検討するため、神奈川県レッドリスト絶滅危惧IB類に指定されているモートンイトトトンボMortonagrion selenionを指標として、個体数調査と水質分析を実施した。2007年、2008年の両年、モートンイトトンボの成虫の発生時期である6月末に、各圃場の周囲をラインセンサスによって個体数調査を実施するとともに、表層水の水質分析を実施した。分析にあたり、水田への流入水である農業用水、各水田の水口および水尻を採水地点とし、pH、電気伝導度、全窒素、全りん、溶存塩類、COD-Mnについて分析した。水質分析の結果、同一の流入水であっても各圃場で水質の違いが大きかった。次に水質12項目による主成分分析を行ったところ、1つのグループに用水・水口のサンプルが集約され、2007年、2008年の両年に渡り、ほぼ同様な流入水質であると考えられた。一方、水尻のサンプルについては、水質の違いにより、3つのグループに類型化できた。そのうち、モートンイトトンボの個体が多数確認できた地点は1つのグループに集約された。各グループ平均水質について、ヘキサダイアグラムに図示し、主要溶存塩類の組成を比較した結果、トンボ個体数が少ないグループでは、Ca2+イオン、HCO3-イオン、Mg2+イオンなどが多く、施肥の影響など管理の違いにより水質が変化していると考えられ、これがトンボの個体数にも影響していることが考えられた。しかし、今回の調査結果では、検体数が少なく有意差が見られなかったため、今後、さらにデータの蓄積を行い、水質とトンボの生息状況との関係性を明らかにする予定である。