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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC1-418

飛ばない昆虫:オオヒラタシデムシの飛翔筋2型

*白石恭輔,廣田忠雄(山形大学・理)


昆虫では、長翅型と短翅型などの外部飛翔形態の多型が存在する種が少なくない。また、外部形態に多型はないが、内部構造の飛翔筋に多型が存在する種も存在する。その多型が維持されている理由として、飛翔能力と繁殖能力のトレードオフがあげられる。一方、多くはないが、飛翔しないにも関わらず多型が存在する種も存在する。そのような種、例えばPhyrrhocoris apterusでは、歩行分散能力と繁殖能力の間にトレードオフが存在する。いずれにしろ飛翔形態の多型は分散能力や繁殖能力と密接に関わっている。

オオヒラタシデムシEusilpha japonicaは、間接飛翔筋に2型があることが報告されている。この種は外部形態に多型は存在せず、飛翔も滅多に観察されない。また2型の存在頻度に差はなく、性による2型の頻度も差はない。加えて、卵サイズや歩行分散能力に差がないことも報告されている。このように飛翔形態に2型があるにも関わらず、能力に差がみられないのはきわめて珍しい。そこで本研究では、オオヒラタシデムシを使い、飛翔しない種の飛翔筋2型の意義を調べることを目的とした。

使用した個体は、山形県と宮城県の河川敷で捕獲した。調査内容は、1:季節ごとの飛翔筋2型の頻度。2:新成虫の飛翔筋2型の頻度。3:餌の量によって新成虫の2型の頻度に影響するか。4:トラップの違いにより2型の捕獲頻度が変わるか。5:卵サイズ。6:2型間の活動性の違い。7:地域間の頻度。基礎データとして、性、体サイズも記録した。1の季節ごとの頻度については1地域の個体のみを使用した。

結果、捕獲場所によって2型の頻度が明確に異なった。このことは生息環境の違いが本種の飛翔筋2型に関わっていることを示唆している。他の結果と合わせて本種での飛翔筋2型の意義について考察する。


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