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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC2-754

メスの浮気性がオスの繁殖戦略に与える影響

*松田亜希子, 北村亘, 小島渉, 山口典之, 樋口広芳(東大・農・生物多様性)


社会的一夫一妻性の動物では、つがい相手以外の雌と交尾をし、子孫を多く残すという雄の戦術が報告されてきた。雄は、つがい外子を多くもうけることで適応度を上げることが可能だが、これは妻との間の子の父性が保守されていることが条件となる。つがい内父性の防衛戦術の一つとして配偶者防衛行動が挙げられる。雄は、妻に交尾をせまる他雄を追い払ったり、妻の浮気を監視することにより、配偶者(つまりは自身の父性)を防衛する。配偶者防衛と、つがい外交尾の追求は同時に行うことが不可能なため、トレードオフ関係にあり、それぞれへの努力の配分戦略が最終的な雄の適応度にどう影響するかが多く論じられてきた。

近年、オスの努力配分戦略に「メスの浮気性」が影響を与えるという考えが提案された。配偶者をうまく防衛できるかどうかは、単純な雄の努力量だけでなく、雌がどれほど従順かにも大きく影響されるはずである。妻の不貞さによってつがい内で見込める父性が変わるとき、雄は配偶者防衛やつがい外交尾への投資努力をそれに応じて変化させる可能性がある。本研究では、雌の浮気モチベーションが雄の繁殖戦略に与える影響の評価の必要性を探るとともに、まだ実証例が少ない雌の浮気性の指標となる行動の提案を目的とした。

配偶者防衛などの行動観察が容易なツバメを材料に:

1.雌の配偶者防衛回避は、不貞さの指標になる行動である

2.雌の不貞さに比例して、雄は配偶者防衛に費やす時間の割合を減らす

の二つの仮説を検証した。結果、雌の回避行動には個体差が多く、回避行動を多く取った雌の子につがい外父性がみつかる傾向がみられたが、そのような雌の行動の違いと雄の防衛時間割合の間に関連はなかった。発表では、雄の防衛努力に違いがみられなかった理由を考察する。


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