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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC2-787

手負いの相手は御しやすい−コバネイナゴの配偶行動におけるケガの影響

*本間淳,鶴井香織,西田隆義


自切は、捕食者に襲われた際に体の一部を犠牲にして捕食を回避する行動であり、多くの分類群においてみられる。しかし、自切によって捕食を逃れても、その後の生存・繁殖に影響(捕食の被致死的効果)を生じることが考えられ、自切に伴うコストの検出を試みる研究がなされてきた。バッタ類では後脚の自切が知られているが、後脚という重要な器官を自切することに伴うコストを多角的に評価した研究はほとんどない。

コバネイナゴにおける自切の起こしやすさについての以前の実験から、片脚よりも両脚を自切するときの方が、また、メスよりもオスの方が有意に自切しにくいことが分かっている。これは、自切の繰り返しにともない適応度コストが増大すること、またそれはオスにおいてより大きいことを示唆する。

今回我々は、自切に伴う配偶コストの検出を、野外でのペア形成率調査と、実験室内における配偶行動観察の両面から試みた。野外で形成されていたペアにおける自切オス率は調査地でのオスの自切率から期待される値よりも有意に少なかったが、自切メス率は期待値とは有意な違いが見られなかった。実験室内では、オス自切処理(健全オス、自切オス、健全メス)とメス自切処理(健全オス、健全メス、自切メス)を作り、配偶行動を観察した。オス自切処理では、どちらのオスも求愛していたが交尾成功率は健全オスが有意に高かった。メス自切処理ではどちらのメスも求愛を受け、交尾率にも有意な違いは見られなかった。これは、自切をするとオスは交尾の際にうまくメスを抑えることができずにはね飛ばされてしまうが、自切メスは特にオスから避けられる訳ではないことを示している。以上の結果は、自切のしにくさから配偶コストがオスでより大きいことを予測した以前の実験結果を支持するものである。


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