ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC2-792
*林 義雄・谷田一三(大阪府大・院理)
大阪府立大学中百舌鳥キャンパス内にある府大池(正式名:園池)に飛来するアブラコウモリの出現パターンについて調査した。H19年のバットデテクターによる調査では、一頭目のコウモリが飛来した時刻(初認時刻)については知ることができたが、それ以後に飛来した個体の増加についてはわからなかった。そこで、H20年の調査では、府大池に飛来したアブラコウモリの個体数を、目視によりカウントした。前回の発表では、バットデテクターのみの結果から、晩夏に初認時刻(日没を基準とした相対時刻)が文献と比較して顕著に早まる現象は、高温ストレスに対する逃避行動によると推察したが、今回は、その仮説を否定する結果が得られた。もし、初認時刻が早まる理由が高温ストレスによるものであれば、出現パターンは、出巣時刻の早まった一部の個体と、高温ストレスを間逃れた大半の個体の合成となるはずである。つまり、個体数のピークは、他の季節とあまり変わらないと考えられる。にもかかわらず、晩夏の出現パターンは全体的に早まっており、他の季節では日没後にピークに達するのに対し、晩夏では日没前にピークに達していた。また、初認個体を撮影したところ、育児中のメスと思われる乳頭の裸出がはっきりと確認された。したがって、飛来時刻が晩夏に早まった理由は、これまで考えられていたように、雌の、授乳期のエネルギー要求性の増加に伴う変化によると考えられる。また、初認時刻が早まる現象が、いくつかの文献の出巣時刻の変化よりも顕著であった理由としては、文献での観察対象が抽出されたコロニーであるのに対し、本研究では、多数のコロニーであるという違いによるものと考えられた。つまり、初認時刻の顕著な変化は、集団内で出巣時刻が最も早まった個体が観察されているためである。