ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC2-804
*久家光晴(九大院・システム生命),矢原徹一(九大院・システム生命),大槻恭一(九大・福岡演習林)
近年、管理を放棄されたモウソウチク林が周囲の二次林などに侵入・拡大し、景観の悪化をはじめ、林床植生の単純化、土壌浸食、害獣の増加など様々な問題を引き起こしている。その中でも特に林床植生の単純化は生物多様性維持の側面からも重要である。林床植生の単純化の原因として光環境と土壌水分環境の変化が指摘されているが、どちらがより重要なのかは分かっていない。本研究では光環境と土壌水分環境の変化を同時に観測し、両者の相対的重要性を検討した。常緑広葉樹二次林へモウソウチクが侵入しつつある場所に2m×26mのトランセクトを三本設置し、それぞれを2m×2mのコードラートに分割した。それぞれのコードラートで毎月一度、出現する植物の種数と植被率、林冠の開空率、表層土壌の含水量(水分/土壌)を記録した。解析には7月から12月までの平均値を用いた。その結果トランセクト1では二次林から竹林への変化にともない、植物の種数は18.0種から5.5種に、植被率は42.5%から12.5%に、また土壌水分量は0.22(m3/m3)から0.19(m3/m3)に減少したが、光環境は大きな変化はなかった。この傾向は他の二本のトランセクトでも同様であった。以上より、林床植生の単純化には光環境の変化より土壌水分環境の変化が大きな影響を与えていたことがわかった。次に林床への水分供給を調べるために、二次林、二次林と竹林の混交林、竹林の三地点で樹冠通過雨量を記録した。その結果、三地点の樹冠通過雨量には違いがなかった。したがって、土壌水分環境の違いは樹冠通過雨量の違いによるのではなく林床土壌の通水性・保水力の違いによるのではないかと考えられる。