ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC2-807
中桐斉之(兵庫県立大・環境人間),吉村仁,泰中啓一(静岡大・創造科学技術院)
生息地破壊によって及ぼされる影響について、その生態系を構成する種数の違いがどのような影響を及ぼしているのか、シミュレーション実験によって調べた。二次元の格子上にn種の生物の存在するサイクリックなモデル生態系を考える。このサイクリックな系は、種1が種2が捕食し、種2を種3を捕食し、…以下同様とする。このモデル生態系に、生息地破壊として、近接する2つの格子サイトの間に壁を密度Dでランダムに設置する。ここで、この壁は生息地の繋がりを阻害する生息地破壊を意味する。このようにして生息地破壊が及ぼされるとき、個体群動態に及ぼす影響について、長期的応答と短期的応答のそれぞれについて、計算機シミュレーションによって調べた。n種類の生物のうちで、ある種(最も低い栄養段階の種)だけが、生息地破壊(壁)の影響を受け、他の種はその影響を全くうけないとするとき、生息地破壊が増加した時の個体群動態への影響を計算機実験によって解析した。生息地破壊の程度(壁の密度)を増加させる実験を行ったところ、短期的応答では種数nに依存せずに全ての種の個体群密度が減少した。しかし、長期的応答では個体群密度が減少する種だけでなく、個体群密度が増加する種が存在し、全体の種数nが奇数の時と偶数の時で増加する種が異なって変化するという偶奇性(パリティ)の法則があることわかった。この系について、平均場近似での予測を行ったところ、同様のパリティ則があることが分かった。この法則は、生息地破壊が起こる際、その個体群動態に対する長期的な応答の影響が、生物間の相互作用がどんなパラメータを取るかというのと同様に、システムのネットワーク構造がどのようになっているかが重要である事を示している。