ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC2-808
*立石 真(秋田県立大・生物資源),黒坂 登(仙北市教委),蒔田 明史(秋田県大・生物資源)
「角館のシダレザクラ」は1974年に153本が天然記念物に指定されたが、そのほとんどが観光地である街中に生育しているため、生育環境は芳しくなく樹勢の衰えが懸念された。そこで2000・2001年に全木を対象とした生育状況調査が行われ、その結果を受けて、2002年度から2007年度にかけて土壌環境と光環境の改善に関する7項目の樹勢回復事業が行われた。本研究は、この事業によってどの程度生育環境が改善され、樹勢に変化が見られたかを明らかにすることを目的とした。さらに、来訪者が有しているサクラの情報について調査を行い、保全意識醸成に有効な方法について考察した。
調査は、現存する天然記念物指定木147本と2008年度に追加指定された15本を対象とし、樹高・胸高直径・土壌硬度・SPADなどの11項目の計測を行い、被陰度や樹木の生育環境などについて分類した。また開花時期に、観光の際の情報収集源や保全に関することなどのアンケート調査を行い、来訪者110人から回答を得た。
生育環境調査から、土壌改良工が行われたところでは、未改良のところに比べ有意に土壌が軟らかくなっており、2002年に工事が行われた箇所であってもその効果は現在まで持続していることが確認できた。また、隣接木の剪定により被陰度も減少し、生育環境の改善が図られていることが明らかになった。ただし、対象が高齢木であったこともあり、胸高直径等の成長パラメータに顕著な変化は見いだせなかった。
アンケートの結果より、事前に保全に関する情報を得ている来訪者は5%程度で、観桜を楽しみに来るものの、サクラがどのように維持されているかについてはあまり知られていないことが明らかになった。その改善のためには、来訪者の多くが利用しているインターネット等を通じて、より積極的な情報提示の必要性が認められた。