ESJ56 一般講演(ポスター発表) PC2-812
*菊地哲理(明治大・院・農), 倉本宣(明治大・農)
固有種の多い島嶼では、固有種の持ち出しや外来種の移入により固有種の生育が脅かされるため、その保全は重要な課題である。伊豆諸島には固有の維管束植物が18種、21変種、1品種、2雑種認められており、これらの植物と人間との共存が望まれる。
サクユリは伊豆諸島のみに生育するヤマユリの変種で、オリエンタルハイブリッドの原種として育種に利用されているほか、観賞用や食用として利用されている。自生については、環境省が国立公園の指定植物に、東京都が都版RDB のAランクに指定して保全の必要性を示しているものの、詳細な情報は少ない。
個体の分布情報は、環境の分布と保護すべき場所、代替的ミティゲーションにおける移植先の選定、保護区のデザインなどの保全活動の際に不可欠な知見の一つである。これを受け、前報では伊豆大島でサクユリの分布特性を調べ、ススキを中心とする遷移初期の明るい群落に生育する特徴を明らかにした。しかし、大島以外の島におけるサクユリの分布状況とその特徴は不明のままであった。そこで本報では、対象の島を大島、神津島、三宅島、御蔵島の4島に増やし、伊豆諸島におけるサクユリの分布状況の把握と、分布への島民の影響の解明を試みた。
調査では、各島で植物愛好会関係者などの島民にサクユリの分布についてヒアリングを行い、その情報をもとに島全体を踏査し、地形図上に分布情報を記録した。また、集落に存在していた個体については、個体の生育している土地の所有者に聞き取り調査を行い、その個体の由来を調べた。本発表ではこれらの調査結果を分析し、大島、神津島、三宅島、御蔵島における本種の分布の状況と特徴を比較する。
本研究は、明治大学新領域創成型研究費の助成を受けて行われたものである。